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建設業界の社会保険加入へ向けた動き
建設業界が社会保険の加入に向けて取り組みを強化しています。もともと社会保険は加入が義務づけられているうえ、雇用環境の改善のためにも重要な福利厚生の一部です。この記事では社会保険の加入に向けた取り組みや、未加入の場合に受ける措置などを解説します。
1.建設業界の社会保険加入状況について
社会保険に未加入の建設業者が多いことは、社会的な問題にもなっています。国土交通省では平成23年から平成24年にかけて、4回の「社会保険未加入対策の具体化に関する検討会」を実施し、この問題に真摯に取り組んできました。
社会保険の種類として挙げられるのは、「雇用保険」「健康保険」「厚生年金保険」など。このうち「雇用保険」は個人・法人事業を問うことなく、1人でも従業員がいる場合は加入の義務が課されています。また「健康保険」「厚生年金保険」も、適用業種の事業を実施し、常に5人以上の従業員を擁している場合は強制適用事業所の扱いとなり、個人・法人事業に関係なく加入しなければなりません。
しかし、建設業界には社会保険未加入のままの事業所もあります。その理由の多くは法定福利費の負担が関係しているからだといわれているのです。上記に挙げた「雇用保険」や「健康保険」など、会社は従業員1人あたりに対して約15%前後の法定福利費を負担しなければなりません。つまり未加入の原因は、この経済的な負担を減らそうとする会社が多いことにあるのです。
2.建設業界において社会保険未加入のままだとどうなるのか
現状のまま社会保険に未加入でいると、行政や元請から指導を受ける恐れがあります。国や都道府県からは事業所への立ち入り検査時に加入指導を受け、元請からも加入指導を受ける可能性が否定できません。しかし、そのような加入指導後も未加入のままでいた場合、社会保険部局に通報されて、強制加入措置や監督処分などを受ける恐れもあるのです。
国土交通省は平成29年度以降より、未加入の会社と契約することや、未加入の技能者による現場入場を認めるべきではないとしています。また、社会保険の未加入は福利厚生レベルの低下にも繋がり、若い人材が減少する要因の1つ。厚生労働省の「雇用動向調査」によると、平成4年の24歳以下の入職者数は25.0万人ですが、平成21年の入職者数は5.2万人と大幅な減少が見られました。
安心して働ける職場環境に改善することが、未来の人材を確保・育成するためには欠かせません。このような現状も踏まえたうえで、現在は行政や建設会社が足並みを揃えて社会保険の加入へ取り組んでいるのです。
3.建設業の社会保険加入へ向けて
社会保険加入に向けた働きかけを強めるため、行政の取り組みも変化。例えば令和2年10月からは建設業者の社会保険の加入が、建設業許可・更新の要件として規定されました。これにより建設会社単位で社会保険に加入していることを確認するように基準が厳格化されたことになります。
また、施工体制台帳には「健康保険等の加入状況」という欄が設けられ、「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」の加入状況を記載することが義務化されました。この他にもCCUS(建設キャリアアップシステム)の導入により、社会保険加入状況をより厳正に確認することが可能となります。
CCUSでは、技能者一人ひとりが所持するキャリアアップカードに登録された情報を活用して、社会保険の加入状況を確認できます。このように社会保険の加入に向けて、建設業界に多くの変革がもたらされているのです。
4.まとめ
社会保険には「雇用保険」や「健康保険」などが含まれ、加入義務があるにもかかわらず未加入のままでいると行政や元請会社から加入指導を受ける恐れがあります。また行政の取り組みも加速化しており、社会保険に未加入の会社の減少に向けたさまざまな取り組みが実施されているのです。
建設業界における若年層が減少していることもあり、社会保険を含めた福利厚生の充実は喫緊の課題。労働環境を改善していくためにも、社会保険の加入促進は重要な働きかけだと言えるでしょう。
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