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裁判例に見る、勤怠管理の怠慢が招く深刻なリスク

日々の業務に追われる中で、勤怠管理の重要性は見過ごされがちですが、その不備は未払い残業代請求や是正勧告に留まらず、最悪の場合、従業員の生命に関わる事態を招き、企業に計り知れない損害をもたらします。今回は勤怠管理の重要性とリスクについて解説します。
・過去の裁判例に見る「勤怠管理」のリスク
過去の裁判例(前橋地裁平成24年9月7日判決)では、時間外労働時間の管理について「自己申告制」を採用していた企業のケースがあります。
この企業では実質的に一定以上の申告については認めず、従業員は実際の労働時間を正確に申告できない状況にあり、結果として、長時間労働を強いられた従業員がうつ病を発症し自死するに至りました。
裁判所は、企業が労働時間の実態を調査し、従業員の健康悪化を防ぐ義務(労働時間把握義務・安全配慮義務)に違反したと認定し、約4000万円の損害賠償を命じました。
この判決は、たとえ自己申告制であっても、企業側は申告された労働時間が実態と合致しているかを確認し、必要に応じて実態調査を行うなど、客観的な労働時間を把握する責任を免れないことを示したといえるでしょう。
・勤怠管理不備が引き起こすその他のリスク
勤怠管理の不備は、上記以外にも、様々なリスクを企業にもたらします。
法的リスク: 労働基準法に定められた労働時間の上限超過、割増賃金の未払い(違反時は罰金や懲役も)、2019年の労働安全衛生法改正で義務化された「客観的な方法による労働時間の把握」義務違反など。
財務的リスク: 未払い残業代は過去(原則5年、当面は3年)に遡って請求される可能性があり、その総額は時に数千万円に及びます。他にも訴訟費用や、企業イメージ悪化による採用難・顧客離れも起こり得ます。
従業員の健康と安全: 長時間労働の放置は、過労死やうつ病などのメンタルヘルス不調の直接的な原因となり、企業の安全配慮義務違反が厳しく問われます。従業員の離職率の増加にもつながり、事業発展の障害にもなり得ます。
・企業防衛の第一歩は「客観的かつ正確な」労働時間管理から
企業には、労働者の始業・終業時刻などを「客観的な記録」に基づいて正確に把握し、これを5年間保存する義務があります。
この義務を確実に履行し、企業と従業員双方を守る有効な手段が「勤怠管理システムの導入」です。
勤怠管理システムは、労働時間を正確かつ客観的に記録するだけでなく、複雑な労働法への
対応、アラート機能で長時間労働を未然に防ぐなど、企業の労務リスクを軽減することが可能です。
大切な従業員と会社を守るためにも、今一度、自社の勤怠管理体制の現状を再確認し、業務に適した勤怠管理システムの導入をご検討いただくことをお勧めいたします。