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建設業の脱Excelとは?Excel管理のリスクや進め方を解説

建設業では、現場管理・工程管理・原価管理・見積作成など、日々多くの業務をExcelで運用している企業が少なくありません。
しかし、案件数の増加や担当者の入れ替わりが続く中、Excel管理の限界が顕在化し、脱Excelが重要なテーマとして注目されています。
Excelは手軽で便利な一方、ファイルの分散、入力ミス、属人化、共有の煩雑さなど、多くのリスクを抱えています。
特に建設業では、現場・本社・協力会社など複数拠点が関わるため、Excelのままでは正確な情報共有が難しく、トラブルや損失につながりかねません。
本記事では、建設業が抱えるExcel運用の課題や脱Excelの必要性、システム化のメリット、具体的な進め方をわかりやすく解説します。
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脱Excelとは?Excel管理のリスク
「脱Excel」とは、これまでExcelを中心に行ってきた業務管理を、専用システムやクラウドサービスなどに置き換え、より安全かつ効率的な運用に切り替えることを指します。特に建設業では、工事台帳、原価管理、発注・請求、工程管理など、多数の業務が長年Excelに依存してきたため、脱Excelは単にツールを変えるだけでなく、業務フローそのものを見直す大きなテーマになりつつあります。
Excelは、少ないデータを扱う場面や、一時的な集計・試算を行うには非常に優れたツールです。しかし、案件数が増え、関係者が増え、リアルタイム性や正確性が求められる環境になるほど、次第にExcelだけでは対応しきれなくなります。建設業はまさにその典型例であり、「最初は便利だったExcelが、いつの間にか業務の足かせになってしまった」という声も多く聞かれます。
脱Excelを考えるうえで、まず押さえておきたいのは、「Excelそのものが悪い」のではなく、「Excelの特性と、建設業の業務特性が合わなくなってきている」という構図です。そのギャップがどこにあるのかを整理するために、代表的なリスクを見ていきます。
情報の一元化・共有が難しい
Excel管理の最大の課題の一つが、情報の一元化が難しいことです。建設業の工事は、営業・見積・契約・施工・検査・請求・アフターサービスまで、長い期間と多くのステップを経て進みます。
その過程で、見積用のExcel、工事台帳用のExcel、発注・支払管理用のExcel、工程表用のExcel、現場日報・出来高管理のExceといった、複数のファイルが自然と生まれていきます。さらに、部署や担当者ごとにフォーマットが分かれ、同じ内容を別々のExcelに二重入力しているケースも少なくありません。
このような状態になると、次のような問題が起きやすくなります。
・最新版のファイルがどれか分からない
・現場が持つ数値と、本社が把握している数値が食い違う
・協力会社と共有している情報が更新されておらず、行き違いが発生する
情報が一元管理されていない環境では、「どの数字を信じるべきか」を毎回確認しなければならず、その確認作業に多くの時間とストレスが費やされます。脱Excelが注目されるのは、こうした「バラバラになった情報のツギハギ管理」から抜け出し、工事情報を一つの基盤で共有したいというニーズが高まっているからだと言えます。
ミスや紛失のリスクがある
もう一つの大きなリスクは、Excelが人の手入力を前提としている以上、ミスを完全には防げないという点です。数字の1つの打ち間違い、コピー&ペーストの範囲を一行ずらしてしまった操作、計算式を誤って上書きしてしまった編集など、Excelならではの“うっかり”は、どれだけ気を付けていてもゼロにすることはできません。
建設業の原価管理では、材料費、外注費、労務費、諸経費など多くの費目があり、それぞれが工事別・期間別に細かく集計されています。そのため、一つのセルのミスがそのまま複数の表に連鎖し、最終的な工事損益の数字を大きくゆがめてしまうこともあります。工事が完了したあとに「あれ、こんなに利益が出ていなかったのか」と気づくケースの裏側には、Excel内の小さなミスが潜んでいることも少なくありません。
さらに、Excelファイルという形態そのものにもリスクがあります。ノートPCの故障、USBメモリの紛失、誤削除や上書き保存によるデータ消失など、一度大きなトラブルが起こると、その工事に関する過去の履歴や根拠がたどれなくなる危険があります。バックアップを取っていても、世代管理がされていなければ「どの時点のデータなのか」が分からなくなり、結局使えないケースもあります。
このように、Excel運用には「気づきにくいミス」と「取り返しのつかない紛失」という二つのリスクが常に付きまといます。脱Excelは、このリスクをシステムによってどこまで低減できるか、という観点からも議論されるべきテーマです。
多くの建設業でExcelを活用している理由
とはいえ、これだけリスクが指摘されていても、多くの建設会社が現在もExcelを主力ツールとして使い続けているのも事実です。その背景には、Excelならではの“使いやすさ”と“慣れ”が深く関係しています。
まず、Excelは多くの企業で既に導入済みであり、新たな投資をしなくても使える点が大きな魅力です。パソコンさえあればすぐに使い始めることができ、特別な環境構築も必要ありません。Excelだけで最低限の管理ができている場合、「新しいシステムにお金をかける必要があるのか」という疑問が生まれるのは自然なことです。
次に、建設業の現場では、長年にわたってExcelで資料を作ってきたベテラン社員が多くいます。彼らにとってExcelは、「考えるより早く手が動く」レベルで体に染みついたツールです。新しいシステムを覚えるよりもExcelで作ったほうが早い、という感覚を持つのも無理はありません。
さらに、Excelは自由度が高く、自社のやり方に合わせて細かくカスタマイズできるため、「うちの会社の業務にフィットしている」という実感を持ちやすいツールでもあります。独自の計算式やマクロを組み込んだ工事台帳、担当者の工夫が詰まった原価管理表などは、一見するととても優秀な“自家製システム”のように見えます。その一方で、作成者本人しか構造を理解しておらず、属人化が進んでしまうという問題にもつながっています。
このように、Excelは「手軽・慣れている・自社に合っている」という理由から、建設業で広く使われ続けてきました。だからこそ、脱Excelを進める際には、「なぜ今、Excelを見直す必要があるのか」「Excelでは越えられない壁がどこにあるのか」を社内で丁寧に説明し、納得感を持ってもらうことが重要になります。
建設業のExcelに適した業務・適さない業務
脱Excelを考えるうえで押さえておきたいポイントは、「すべてのExcelをやめる必要はない」ということです。重要なのは、Excelに向いている業務と向いていない業務を見極め、向いていない部分から順にシステムへ置き換えていくことです。
Excelが適しているのは、比較的データ量が少なく、関わる人も限定され、短期間で完結する業務です。たとえば、簡易的な集計、社内説明用の資料作成、試算用のシミュレーション、個人のタスク管理などは、Excelの強みが発揮される領域です。柔軟に列や行を増やしたり、項目を追加したりできるため、試行錯誤をしながら業務を改善したい場面にも向いています。
一方で、建設業の中核をなす次のような業務は、Excelでは限界が見えやすい領域です。
・工事ごとの原価管理(材料費・外注費・労務費の集計)
・複数工事にまたがる収支管理
・協力会社への発注・検収・支払管理
・長期間にわたる工程管理・出来高管理
・現場と本社、複数拠点で共有すべき基幹データの管理
これらの業務は、データ量が多く、更新頻度も高く、関係者も多いため、Excelでの運用を続けると、必ずと言っていいほどどこかで無理が生じます。ファイルがどんどん重くなり、開くだけで時間がかかる。複数人が同時に触れないので、更新待ちの時間が発生する。誰か一人の理解に頼った複雑な関数が増えていき、いつしか「誰も手を入れられないファイル」になってしまう。こうした状況は、多くの現場で既に経験済みではないでしょうか。
だからこそ、脱Excelとは、Excelというツールを完全に排除することではなく、「基幹業務をExcelに任せ続けるリスクから抜け出す」ことだと捉えると、現実的な議論がしやすくなります。Excelに残す業務と、システムに移す業務の線引きを、段階的に見直していくことが大切です。
建設業の脱Excelのメリット
では、建設業が脱Excelを進めることで、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、特に効果が大きい3つのポイントを見ていきます。
スピーディに情報を共有できる
まず一つ目のメリットは、情報共有のスピードと精度が飛躍的に向上することです。Excel運用では、「誰かが更新したファイルを、別の誰かに渡す」というプロセスが基本になります。メールに添付したり、共有フォルダに保存したりといった手間が必ず発生し、そのたびにタイムラグが生じます。
専用システムに移行すると、工事情報はシステム上の一つのデータベースに集約されます。現場で出来高や発注情報を入力すると、その瞬間に本社側の画面にも反映され、経理や経営層も同じ情報を参照できます。これにより、次のような変化が期待できます。
・工事の進捗判断が早くなる
・原価のズレに早く気づける
・資金繰りの見通しが立てやすくなる
・協力会社への支払や請求スケジュールを把握できる
「情報が届くのを待ってから動く」のではなく、「常に最新の情報を見ながら動ける」状態になることが、脱Excelによる大きな価値の一つです。
属人化を防げる
二つ目のメリットは、業務の属人化を防げることです。Excelで作り込まれた管理表やマクロは、その担当者の“頭の中のロジック”がそのまま埋め込まれたものになりがちです。その結果、作成者以外の人がファイルを開いても、どこを触るべきか分からず、「結局その人にしか更新できない」という状況が生まれます。
システムに移行すると、入力項目や計算ロジックがあらかじめ定義され、画面の流れも統一されます。そのため、次のような効果が期待できます。
・誰が入力しても同じ形式でデータが蓄積される
・担当者が変わっても、引き継ぎがしやすい
・新人教育の内容も標準化しやすい
個人のスキルに依存していたExcel運用から、組織として再現性のある業務プロセスへと移行できることは、長期的に見て非常に大きなメリットです。
セキュリティ・内部統制の強化につながる
三つ目のメリットは、セキュリティと内部統制の強化です。Excelファイルは、一度社外に出てしまうと追跡が難しく、不正コピーや情報漏えいのリスクも高くなります。また、誰がどのタイミングでどのデータを変更したのかという履歴も残りにくく、問題が起きた際に原因を特定しづらいという弱点もあります。
一方、業務システムであれば、ユーザーごとに閲覧権限や編集権限を細かく設定でき、アクセスログも自動的に記録されます。重要な原価情報や取引先情報を、必要な人にだけに安全に共有できるため、情報管理のレベルを一段引き上げることができます。監査対応やコンプライアンスの観点からも、Excel管理よりシステム管理の方が望ましいのは明らかです。
建設業の脱Excelを進めるステップ
脱Excelは、一気にすべてを変えようとすると現場が混乱し、かえって逆効果になってしまう恐れもあります。そこで重要になるのが、段階的に、ステップを踏んで進めていくことです。
Excelを使用している業務の洗い出し
最初のステップは、「現状把握」です。まず、社内のどの業務でExcelが使われているのかを棚卸しします。工事部門、営業部門、経理部門、総務人事など、それぞれの部署の担当者にヒアリングし、日常的に使っているExcelファイルの種類、用途、作成者、更新頻度などをリストアップしていきます。
この段階では、細かいファイルも含めて網羅的にピックアップすることが重要です。後から「この業務を見落としていた」という抜け漏れを防ぎ、「自分たちは思った以上にExcelに依存している」という気づきを共有することができます。
Excelを使用している業務の課題の把握
次に、それぞれのExcel運用にどのような課題があるのかを可視化します。
例えば、
・ファイルが重く、開くのに時間がかかる
・最新版が分からず、確認に時間がかかる
・入力ミスが多く、ダブルチェックが負担になっている
・担当者しか中身を理解していない
・集計や転記に多くの時間を費やしている
といった声が現場から上がってくるはずです。こうした課題を一覧にすることで、「なぜ脱Excelが必要なのか」を社内の共通認識にしていくことができます。
脱Excelの必要性を判断
課題の整理ができたら、どの業務から優先的に脱Excelを進めるべきかを判断します。原価管理や工事台帳など、経営への影響が大きく、ミスが致命的になりやすい領域は優先度を高く設定すべきです。一方、個人のメモレベルの管理や、短期間だけ使う簡易資料などは、引き続きExcelを使っても問題ないケースが多いでしょう。
ここでのポイントは、「どこまで脱Excelするか」を現実的に決めることです。全部を一度に変えようとするのではなく、「まずはこの業務から」というスモールスタートを設計することで、自社に合ったペースで取り組みを進めやすくなります。
システムの選定
最後のステップが、実際に導入するシステムの選定です。建設業の脱Excelを本格的に進めるのであれば、建設業務に特化したシステムを候補に入れることが現実的です。一般的な業種向けのシステムでは、工事特有の勘定科目や原価構造、現場運用との整合性が取れないことがあり、「結局Excelを補助的に使い続ける」状況になってしまう場合もあります。
システム選定の際には、必ず現場の担当者にも見てもらい、自分たちの業務に無理なくはめ込めそうかどうかを確認することが重要です。デモやトライアルを通じて、「この入力で、あのExcelでやっていた集計が置き換えられるのか」「既存データの移行は現実的か」といった点を細かくチェックしていくと、導入後のギャップを減らすことができます。
建設業の脱Excelに活用できるシステム
脱Excelを支えるシステムには、さまざまな種類があります。原価管理システム、工程管理システム、プロジェクト管理ツール、会計システム、そしてそれらを統合したERP(基幹業務システム)などです。
建設業におけるポイントは、「部分最適で終わらせないこと」です。例えば、工程だけをクラウドのスケジュールツールで管理しても、原価情報がExcelのままでは、進捗とコストを一体的に把握することができません。逆に、原価管理だけシステム化しても、現場の出来高や進行状況が別のExcelや紙で管理されていれば、結局どこかで転記作業が発生し、ミスの温床となってしまいます。
理想的には、工事台帳・原価管理・発注・請求・支払・会計までを一気通貫でカバーできるシステムを導入し、現場と本社の情報を一つの基盤に集約することが望ましいと言えます。ERPであれば、工事単位の収支状況をリアルタイムで確認しながら、個別の仕訳や月次決算にもスムーズにつなげることができ、Excelでは難しかった「全体像の見える化」が実現しやすくなります。
建設業の脱ExcelにおすすめのERPシステム「ガリバーシリーズ」
建設業向けERPシステム「ガリバーシリーズ」は、建設業・工事業の業務プロセスに特化して設計されており、工事管理、原価管理、売上・請求、仕入・支払、会計連携など、これまでExcelで分散管理されていた情報を一つのシステムに統合することができます。
ガリバーシリーズを活用することで、次のような変化が期待できます。
・工事ごとの原価や利益をリアルタイムに把握できる
・現場で入力した情報が、そのまま本社の管理画面に反映される
・発注・請求・支払の情報が一元化され、資金繰りの見通しが立てやすくなる
・Excelで作っていた工事台帳を、システム標準の画面・帳票に置き換えられる
建設業務における脱Excelを本格的に進めたい企業には、ガリバーシリーズが原価管理・工事台帳・会計までを一貫してサポートします。既存のExcel帳票の内容を踏まえながら、どのようにシステムに移行すべきかを検討しやすく、「Excelを捨てる」のではなく「Excelでやっていたことをより安全・効率的な形に進化させる」という感覚で導入を進めることができます。
まとめ
本記事では、建設業におけるExcel運用の課題と、脱Excelの考え方・進め方について整理しました。
Excelは、手軽で柔軟性の高い便利なツールであり、これまで多くの建設業の業務を支えてきました。しかし、情報量の増加、関係者の増加、人手不足や属人化といった要因が重なるなかで、基幹業務をExcelだけで支えることには限界が見え始めています。情報の一元化ができないこと、ミスや紛失のリスクが常に存在すること、担当者に業務が依存してしまうことなど、Excelの特性と建設業の実情とのギャップは今後さらに大きくなっていくと考えられます。
だからこそ、今のタイミングで、自社がどこまでExcelに依存しているのかを見直し、段階的に脱Excelを進めていくことが重要です。
これは、単なる業務改善ではなく、競争力を高め、将来の成長を支えるための大きな投資と言えるでしょう。










