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建設業のICT化とは?メリットやICT化すべきポイントを解説
建設業のICT化とは、建設業の調査、設計から施工、維持管理といった一連の業務や、顧客へ提供するサービスなどの一部にICTを取り入れることで、業務効率化や生産性向上、顧客満足度の向上を図ることをいいます。
近年、あらゆる業界で「ICT化」という言葉が聞かれるようになりました。
ICTとは、「Information and Communication Technology」の略称で、情報通信などの技術を意味する言葉です。
つまり情報の共有によって人やもの同士をつなぎ、コミュニケーションを推進して業務の効率化を目指すのがICT化ということになります。
ICT化による業務の改善は、今後社会の中軸として機能するための重要なポイントになるでしょう。
今回は、建設業のICT化について、課題やメリットなどをご紹介いたします。
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1.建設業のICT化とは
建設業のICT化とは、建設業の調査、設計から施工、維持管理といった一連の業務や、顧客へ提供するサービスなどの一部にICTを取り入れることで、業務効率化や生産性向上、顧客満足度の向上を図ることをいいます。
建設業においてもICT化は進められていて、たとえば以下のような施策が現場で実施されています。
- WEBカメラを使っての現場状況の確認
- VRを使った危険体感教育による危機の認識
- 電子端末(スマホやタブレットなど)を使っての図面や工数のやりとり
- クラウドサーバーを用いた従業員の健康・安全管理
上記のようなICT施策によって建設業も効率化を始めていて、これからのさらなる発展に期待がされています。
今後の建設業界では、積極的なICT化の推進と活用に注目が集まっていくでしょう。
2.ICTとi-Constructionの違い
ICTと合わせて「i-Construction」という言葉がよく使われていますが、この2つにはそれぞれ別の意味が込められています。
i-Constructionとは、国土交通省が2016年より進めている「建設現場へICT技術を導入していく取り組み」のことです。
ICTの活用によって、生産性の向上や現場環境の改善が行われることなどが目的とされています。
i-Constructionのトップランナー施策として進められているのが、以下の3つの内容です。
・ICT技術の活用
土木の現場で、スピーディかつ高クオリティの建設業務を進めることを目的とした取り組みです。
調査や設計などの建設生産に欠かせないプロセスで、積極的にICTを活用していくことが求められています。
たとえばドローンによる3次元での測量や、ICT建機による施工などが事例として挙げられます。
・規格の標準化などによる全体最適の推進
生産工程や維持管理などのプロセスを全体的に最適化して、現場ごとの規格や工法からバラツキをなくすことを目的とするのもi-Constructionの取り組みの特徴です。
規格の標準化などを進めてコストの削減や生産性向上を実現し、全体の効率化を推進します。
・施工の時期を標準化する
建設現場における繁忙期と閑散期をなくすために、施工時期を標準化して年間の仕事量のバランスを取るように計画することも施策のひとつです。
常に安定した雇用が生まれることによって、従業員の働きやすい環境が作られるため、将来的に人手不足の解消などにつなげられるかもしれません。
こういったi-Constructionの施策が、建設業に今大きな影響を与えているのです。
この施策を見るとわかるように、ICTとはi-Constructionを進めるための手段の一部となっています。
つまりi-Constructionを支える手段として、ICT化が実施されているということになるのです。
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3.建設業にICTが求められる理由
それではなぜ、建設業にICTが求められるようになったのでしょうか。
その理由としては「建設業の生産性が向上していない」ことや「慢性的な人手不足」が挙げられます。
建設業の生産性が向上していない
バブルが崩壊してから建設業では労働力が過剰状態であったため、人員を削減するための省力化を行う必要がなく、建設現場の生産性を向上させるような施策が不要とされてきました。
そのため他業界と比べて生産性の向上が熱心に行われず、結果的に発展が鈍化してしまったのです。
また、建設業では工事の内容や工期が現場ごとに異なるため、仕組みのパターン化・簡略化が難しかったり、外部の人員を使ってのアウトソーシングがしづらかったりという特徴も関係しています。
こういった現状が建設業の生産性向上を妨げたために、今ICTが強く求められることになっているのです。
慢性的な人手不足
建設業では人手不足が慢性化しており、これがICT化を急ぐ理由のひとつでもあります。
国土交通省が提示する「建設投資、許可業者数及び就業者数の推移」によると、平成28年度の建設業就業者数の平均は492万人です。
これはピークの平成9年度と比較すると約28%の減少になり、人手不足の深刻化を表す指標になっています。
また、高齢化によって10年後には現在の建設業を支える多くの高齢者が離職する見通しになっているのも、ICT化を進める理由です。
離職者の穴を埋めるための施策として、根付いた3K職場のイメージ改善や、若年入職者の確保と育成、そしてICT化が進められています。
国土交通省の「建設現場の生産性に関する現状(平成27年12月)」の資料によると、技能労働者の約110万人が高齢によって離職する可能性があるとのこと。
よってICT化による業務の効率化は、今後の建設業に欠かせないものだと考えられるでしょう。
4.なぜ建設業にICTが普及しないのか
積極的なICT化が進められる一方で、建設業にはなかなかICTが普及していかないという現実もあります。
業務の効率化が実現できるICTが、なぜ普及しないのでしょうか。
建設業には中小企業が多いため、ICTの導入コストを捻出できない
建設業を支えているのは、資本金や従業員数が少ない中小企業です。
そのため、高額なコストが必要となるICT化は、なかなか進められないという背景があります。
ICTの補助金制度なども実施されてはいますが、それだけで全てのコストを賄うことは困難です。
コストの問題から、余裕のない中小企業はICT化を後回しにしてしまい、結果的に普及を遅らせる原因になっているのです。
従業員の高齢化によって新技術の浸透が難しい
建設業に携わる従業員の高齢化も、ICT化を滞らせる原因のひとつです。
ICTという最新のデジタル技術を従業員が使えるようになるためには、ある程度のITリテラシーが必要となります。
高齢者ほど、デジタルに対する拒否感が強い傾向があるため、導入・浸透の負担が大きくなってしまい、断念してしまうというケースも珍しくありません。
5.建設業にICTを導入するメリット
建設業にICTを導入することで、大きく次の3つのメリットが期待できます。
生産性を向上できる
ICTを導入することで、建設業の生産性が大幅に向上します。
たとえば、図面や写真データをデジタル化し、クラウド上で管理することで、情報共有が迅速かつ容易になります。これにより作業効率が上がり、時間を節約できるため、より多くのプロジェクトに取り組むことが可能になります。
また、ICTを活用して人手不足を緩和することも、生産性の向上につながります。
デジタル化によって作業効率が向上し、少ない人数でも多くの作業をこなすことが可能になります。
また、ICTの活用により、それまで作業員に求められていたスキルが緩和され、募集できる人材の層が広がることも期待でき、人手不足解消に役立ちます。
品質を向上できる
ICTの導入は、建設現場の品質向上に役立ちます。
たとえば、デジタルツールを活用することで、正確な数値やデータに基づいた作業が可能になり、結果として建設物の品質が向上します。
また、リアルタイムでの監視や分析により、問題が発生した際の迅速な対応が可能になります。
職場環境を改善できる
ICTの導入は、職場環境の改善にも寄与します。
デジタルツールの利用により、作業の効率化が進み、従業員の過度な負担が軽減されます。
これにより、労働時間の削減や休日出勤の減少が期待でき、従業員の満足度やモチベーションの向上につながるでしょう。
このほか、環境負荷の軽減につながるといったメリットも期待できます。
6.建設業でICT化すべきポイントと役立つツール
建設業でICT化すべき業務は、大きく「情報の共有・管理」「健康管理と安全の確保」「打ち合わせ・会議など」の3点です。
各業務で活用できる、具体的なICTの例もご紹介いたします。
情報の共有・管理
ICT化により、図面や工程表などの重要な文書をデジタル化し、クラウド上で管理することで、現場と事務所間の情報共有が迅速かつ正確に行えるようになり、作業の効率化が図れます。
たとえば、タブレット端末を活用すれば、現場での図面の確認や変更が容易になります。
これにより、建設現場での変更点をリアルタイムで文書に反映し、オフィスのチームと共有することが可能です。また、プロジェクトの進捗状況や必要な資料をクラウド上で一元管理し、関係者間で簡単にアクセスできるようになります。
健康管理と安全の確保
ICTツールを活用することで、建設現場の安全性も向上できます。
たとえば、現場監視カメラシステムを導入することで、作業員の安全をリアルタイムで監視し、危険な状況を迅速に察知することができます。これにより、重機の操作中に発生する可能性のある危険な動きや、作業員の安全を脅かす可能性のある状況を監視し、事故を未然に防ぐことが可能です。
打ち合わせ・会議など
Web会議や映像配信システムの導入により、建設業でも遠隔地での打ち合わせが可能になります。これにより、移動時間やコストを削減し、より多くの時間を本質的な作業に当てられるようになります。
また、遠隔地にいる専門家からのアドバイスをリアルタイムで受けることも可能になり、プロジェクトの質を向上させることができます。
7.まとめ
多くの課題を抱えている建設業ですが、今後ICT化を進めていくことによって、その壁を乗り切ることができるかもしれません。
ICT化による業務効率化は、その後の事業に長く影響を与えます。
長期的に見れば、今ICT化のために動くことが、事業に大きなメリットを与えることになるでしょう。
この機会に本格的なICTの導入を計画して、事業の効率化及び改善を目指してみてください。
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