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JV(共同企業体制度)の会計処理やメリット・デメリットについて解説

建設業に携わる方ならば、JV(共同企業体制度)という言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。JVには、結成目的や施工方式によっていくつかの種類がありますが、会計方式は大きく2種類です。今回は、JVの種類と会計方式、よくあるご質問をご紹介しますので、JVの会計について知識を深めましょう。
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JV(共同企業体制度)とは
建設業におけるJV(Joint Venture/ジョイントベンチャー)とは、共同企業体を指します。 国土交通省によると「建設企業が単独で受注及び施工を行う通常の場合とは異なり、複数の建設企業が、一つの建設工事を受注、施工することを目的として形成する事業組織体のこと」と定義されています※。
法的には、法人格はなく民法上の組合の一種とされ、通常2~5社の構成員によって運営されます。
JVは結成目的によって3種類があり、さらに施工方式が2種類に分かれます。
※「建設産業・不動産業:共同企業体制度(JV)(国土交通省)」
結成目的別のJVの区分と特徴
結成目的別の区分には、「特定JV(特定建設工事共同企業体)」「経常JV(経常建設共同企業体)」「地域維持型JV(地域維持型建設共同企業体)」があります。
ここでは、3つの区分の特徴と役割をわかりやすく解説します。
特定JV(特定建設工事共同企業体)
特定JVは、特定の建設工事を実施するために一時的に複数の建設業者が結成する共同企業体です。プロジェクト完了後には解散することが前提であり、長期的な活動は行いません。大規模で工期の長い工事や、高度な技術力が求められる公共インフラ整備などの案件で採用されることが多く、それぞれの企業が持つ専門技術や人材を集約することで、高い施工品質と工期の確実な遵守を目指します。
経常JV(経常建設共同企業体)
経常JVは、複数の中小・中堅建設業者が長期的な協業関係を築くことで、経営基盤や施工能力の強化を図るために結成されます。個々の企業では受注が難しい大型案件にも対応できるようになり、受注機会の拡大や技術の相互補完、安定的な経営の実現が期待されます。また、各企業のノウハウを共有し合うことで、建設レベルの底上げにもつながる点が特徴です。
地域維持型JV(地域維持型建設共同企業体)
地域維持型JVは、地域のインフラを長期にわたり維持・管理することを目的に結成される共同企業体です。除雪・除草、堤防や道路の補修・舗装といった定常的な保全業務を担うことで、災害への備えや住民の生活の安全確保に貢献します。特に地方部では、単独の企業では担いきれない公共サービスの維持を可能にする仕組みとして重視されており、地域密着型の持続的な活動が求められます。
JVの施工方式
JV(共同企業体)は、工事の進め方に応じて「共同施工方式(甲型JV)」と「分担施工方式(乙型JV)」の2つに区分されます。どちらの方式を採用するかは、プロジェクトの規模や内容、構成企業の役割分担に応じて決定され、それぞれに特徴やメリット・留意点があります。ここでは、両方式の違いと特徴について整理して解説します。
共同施工方式(甲型JV)
共同施工方式(甲型JV)は、JV構成員があらかじめ定めた出資比率に基づき、資金や人員、建設機械、資材などを共同で提供し、共同で工事を進める方式です。利益は各社の出資比率に応じて公平に分配され、意思決定や責任の共有も求められることから、密な協力体制と合意形成が成功の鍵を握ります。
分担施工方式(乙型JV)
分担施工方式(乙型JV)は、JV構成員があらかじめ合意した工事区分や金額に基づき、工事の内容や箇所を分担して個別に施工を行う方式です。各社は自らの担当範囲を責任を持って施工しますが、全体としては連帯して工事の完成責任を負うため、トラブル発生時の連携も不可欠です。利益は分担工事ごとに個別精算され、独立性を保ちつつも一定の共同責任を担うハイブリッドな仕組みといえます。
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JVのスポンサー会社とサブ会社
JV(共同企業体)は、複数の企業が協力してプロジェクトを遂行するために結成されます。法的にはすべての構成員が対等な関係にありますが、実務上の効率性を高めるため、構成員の中から代表者が選ばれ、その企業に運営上の主要な役割が与えられます。この代表企業を「スポンサー会社」、その他の構成員を「サブ会社」と呼び、それぞれに明確な役割分担があります。
スポンサー会社
スポンサー会社は、JV全体の統括的な役割を担う企業です。発注者との交渉や契約管理、工事全体のスケジュールや予算の調整、現場運営、工事計画の立案と遂行に加え、JV委員会の運営まで幅広い業務を担います。特に重要なのが会計管理業務であり、スポンサーは毎月末にJV全体の財務状況をまとめ、サブ会社に対して財務諸表を報告する責任を負います。円滑なJV運営には、スポンサー会社の管理能力と情報共有の精度が求められます。
サブ会社
サブ会社は、スポンサー会社の補完的な立場としてJVに参加する構成員です。法的にはスポンサー会社と対等の権利を持ちますが、実務上は工事の一部を担当するなど、主に現場レベルでの作業や分担業務に注力します。サブ会社もJV全体の一員として成果責任を負う立場にあり、スポンサー企業から提供される財務情報や進捗報告をもとに自社の業務を管理します。
JVの会計処理について
JVの会計方式には、取り込み式と独立方式のふたつがあります。国土交通省の指針によると「JVは本来ひとつの独立した事業組織体であり、その組織体ごとに実際の工事の施工や管理などが実施されている。そのため、会計も独立した組織体として行われることが自然」とありますが、実態としてはその多くが事務作業の煩雑さから取り込み方式を採用しています。
取り込み方式
JVの会計処理をスポンサーの会計に取り込んで処理する方式です。この場合、JVの会計がスポンサーの財務諸表に入り込んでしまうため、出資比率に応じて修正する必要があります。この方法には2種類あり、スポンサーが取引の都度JVの持分のみを処理する「逐次持分把握法」と、期末または決算時に持分のみを計上する「決算時持分把握法」に分かれます。
独立方式
JVを企業から切り離し、独立した会計とする方式です。JVのどの構成員の会計システムも利用せずに、独立した会計を行います。
取り込み方式と独立方式のどちらの方式を利用しても、決算では同じ結果になります。
JVのメリット
JVを採用するメリットには、次のようなものがあります。
資金力のアップ
共同体となることで、それぞれ単独企業の場合に比べて資金力がアップします。
資金が潤沢であれば、たとえば、必要な人員や機械を揃えるのが楽になったり、資本金の金額が大きくなることで信用度が増し、入札で有利になったり金融機関から融資を受けやすくなったりするでしょう。
リスクの軽減
個々の企業としての経営があった上で、共同体としての運営が成り立っているため、JVを採用するだけで、リスクヘッジになります。
たとえば、どこか一企業が経営難に陥ったとしても、残り大半の企業が無事なら、受注した工事を継続できます。
技術力の向上
JVを採用すると、一つの団体として大きな案件を受注できます。そして、大きな案件では高い技術力が求められるケースが多いです。
このため、技術力の低い企業は、現場で共有されるさまざまな技術を習得でき、技術力を高めることが可能です。
受注の可能性が上がる
たとえば、自社が何か一つの専門性を高めたとすると、汎用性がなくなる分、受注の可能性は下がります。また、経営状況の悪化などから企業規模を縮小した場合も、信用度が下がって受注しづらくなります。
JVを結成することで、自社の専門性を活かしながら協同体として他社の専門性や技術を疑似的に保有したり、資本金を大きくしたりできるため、受注の可能性を上げることができます。
施工が円滑になる
JVとして請け負った工事は、代表者であるスポンサー会社が全体を統括し、ほかの参加企業であるサブ会社は、それぞれの担当工事について報告を行うというスタイルで進められます。
スポンサー会社の業務負担は大きくなるものの、全体の進捗状況を管理しやすく、各現場ではそれぞれの工事に専念でき、全体としての施工が円滑に進むことが期待できます。
JVのデメリット
一方、JVにもデメリットが存在します。
それば主に、「スポンサー会社にとって有利な選択が可能になる」「利益と責任が連携するため、連帯責任になる」の2点です。
スポンサー会社にとって有利な選択が可能になる
「スポンサー会社とサブ会社」でお伝えした通り、出資比率が最も高いスポンサー会社には、さまざまな管理業務が発生します。同時に、見積や入札金額の決定など、意思決定も担います。
このため、スポンサー会社は自社にとって有利な決定を下す可能性が高く、サブ会社に不利となる恐れがあります。
これは、スポンサー会社にとってはメリットですが、サブ会社にとってはデメリットとなります。
利益と責任が連携するため、連帯責任になる
「施工方式による区分」でお伝えした「共同施工方式(甲型JV)」を採用した場合は、利益・損益は、出資比率に応じて配分されます。このため、たとえ自社が担当した工事で利益が出ていても、ほかの参加企業が担当した部分で損益が出た場合、最終的に自社が損益を被る恐れもあります。
また、参加企業の中に、工事の途中で倒産してしまう企業があった場合、そのカバーに入らなくてはなりません。
このように、連帯責任になることでデメリットが発生する可能性があります。
よくある質問
JVの会計処理で、よくある質問をまとめました。
Q:JVの結成前に発生した費用の処理方法は?
JVの結成前に発生した費用については、結成後の運営委員会の協議を待つ、事前に自社内でJVの協定原価に算入するかどうか決めて処理するなどの方法があります。
Q:JVにおける消費税の納税義務は誰(どこ)が負うのですか?
納税義務は各構成員が負います。建設共同企業体協定書(協定書)に明記されている利益の分配割合に応じて支払います。
Q:JVにおける出資金請求での消費税の取り扱いはどのようにすればよいですか?
出資金は各構成員がJVに対して支出する場合はまだ構成員の持分なので、課税対象外となります。出資金で建設資材などを購入したときに課税されます。
Q:JV工事で支払う給与への源泉徴収義務は誰に対して発生するのでしょうか?
JVでの労働に対して支払う給与でも、支払者に源泉徴収義務が発生します。JV(共同企業体)として労働者を直接雇用することはありません。
Q:構成員の一部が破産した場合は?
構成員が開札前に破産した場合、その構成員はJVを脱退、新たな構成員を加えてJVを再結成することができます。開札後(施工中)の場合は、受注した工事を残存企業で遂行します。残存企業が2社以上の場合は、脱退企業の出資比率を残存企業に配分し、脱退企業の技術者の従事期間をJVに所属していた最終日に修正します。
残存企業が1社のみの場合、発注者にJV契約を続行するか確認します。JV契約続行の場合は残存企業2社以上の場合と同じ手続きをとり、単独契約に切り替える場合には、受注形態を単独に変更の上、請負者情報を残存企業の情報に修正します。
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まとめ
JV(共同企業体制度)を採用するメリットやデメリット、会計処理について解説しました。
JVには、採用するメリットが多いものの、デメリットもあるため、事前に理解した上で採用しましょう。
会計処理については、取り込み方式が採用されるケースが多く、スポンサーの会計に取り込んで処理したり、
出資比率に応じて修正する必要があったりすることから、複雑になりがちです。
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