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工事進行基準で不正が起こってしまうカラクリ

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建設会計において多くの企業が採用する工事進行基準は、工事契約における売上高を進捗に応じて各期に計上できる、企業側にとってはメリットの大きい仕組みです。とくに、着工から竣工までの期間が数年にも及ぶような大型案件に取り組む企業にとっては、なくてはならない会計処理とも言えるでしょう。しかし、これが原因となり不正会計が行われてしまう事例が報告されています。そこでこちらでは、そもそも工事進行基準が何なのか? なぜ不正が起こるのか? といった点について解説を行います。

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1.工事進行基準の仕組み

工事進行基準を理解する上で重要になるのが「売上計上基準」と呼ばれる決まりです。これは、どの段階まで工事が進行すれば売上を計上していいかを示すもの。今回ご紹介する「工事進行基準」は、売上計上を進捗度に合わせて計上ができる会計処理です。

では、「工事進行基準」を採用することで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?たとえば工事進行基準と対をなす「工事完成基準」の場合、工事が完成して引き渡しまで完了しなくては、当該会計期への売上計上が行えません。しかしこれでは、企業側に大きなデメリットがあります。

企業は毎期の決算書で信用を評価されます。状況にもよりますが、たとえば大幅な赤字のある企業に融資する金融機関は少ないでしょう。しかし、来期になれば現在進行中の工事が完了し、大きな売上が見込まれるという場合ならどうでしょうか。金融機関としては、本来その点についても考慮した上で融資審査を行いたいはずです。

しかし、「工事完了基準」では決算書に進行中の工事における売上を計上できません。その結果、費用などはすべて単なる支出として見なされるため、正しい判断ができなくなってしまいます。なお、これは融資を行う金融機関だけでなく、取引を行う企業や株を購入する投資家にとっても同じことです。

こうした背景もあり、現在「工事進行基準」を会計基準に適用することが多くの企業に求められています。

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2.工事進行基準で売上高を計算するための3つの要素

次に、具体的な工事進行基準の内容についても見ていきましょう。工事進行基準の計算で基準になるのは以下の3要素です。

  • 工事契約によって得られる収益合計
  • 工事契約によって発生する原価合計
  • 工事の進捗度(決算日時点)

上記のうち、収益合計と原価合計は工事の全期間を通じて忌まれる売上高と費用のことです。各年の売上高と費用を求めるには、これに「工事の進捗度」をかけて計算がされます。

具体的な式をいくつか見てみましょう。

各年の売上高

収益合計×工事の進捗度−本契約によって生まれた前年までの売上高

各年の費用

原価合計×工事の進捗度−本契約によって生まれた前年までの費用

このように、工事の進捗度は売上高や費用のパーセンテージとして扱われ、前年の金額を引くことでその年の売上高や費用が求められます。なお、工事の進捗度については計算方法が企業で異なりますが、多くの場合「原価比例法」と呼ばれる、原価発生の進捗度で計算されます。

工事の進捗度(決算日時点)

決算日までに発生した原価÷工事契約によって発生する原価合計

注意しなくてはいけないのは、こうした計算に用いられる要素(収益合計・原価合計・工事の進捗度)はあくまで企業側の予測値であるという点です。つまり、上記の式で求められる金額というのも、すべて予測の範囲であって、実際の金額ではありません。

3.操作されてしまうのは「原価合計」

企業側にとっても、取引相手にとってもメリットが大きいように見える工事進行基準ですが、会計基準に適用することで不正事例がいくつか報告されています。この多くは、「原価合計」の操作が要因になっているようです。

たとえば、原価合計の金額を小さくした場合。ここでポイントになるのは工事の進捗度と売上高です。決算日までに発生した原価が1,000万円だったケースに当てはめて計算してみましょう。

原価合計が1億円の場合

発生原価:1,000万円÷原価合計1億=工事の進捗度10%

原価合計は5,000万円の場合

発生減価:1,000万円÷原価合計5,000万円=工事の進捗度20%

原価合計を少なく見積もれば、その分工事進捗度は大きくなります。各年の売上高は、収益合計に工事の進捗度をかけて求められますから、その分形状できる売上高も大きくなるのです。これはつまり、利益を前倒しし、損失を先延ばししているのと同じであると言えるでしょう。

では、なぜ原価合計の操作が行われてしまうのでしょうか? 理由のひとつとして挙げられるのは、原価合計の集計がそもそも困難であり、かつ客観的な判断が難しいことにあります。専門的な作業や材料が多く組み込まれていれば、同じ会社の人間であったとしても、その金額が適切かどうか評価できない可能性もあるでしょう。とくに、予算達成へのプレッシャーが強い会社であれば、営業部が原価合計を過少に見積もることは多いにあり得ます。

4.利益の前倒し・損失の先延ばしをしても、結局は損してしまう

工事進行基準を踏まえ、原価合計を小さく見積もるといった操作は当該会計期における売上達成には有効に働くかもしれません。しかし当然ではありますが、工事が完了してしまえば最終的な売上計上で正しい数字が明確になります。この際、原価合計の操作などで利益の前倒しや損失の先延ばしをしていれば、自分たちの首を締めることになるでしょう。

工事進行基準で売上計上を行うのであれば、企業側が誠意を持って見積もりを行い、実際の売上との差を最小限に留められるよう努める必要があります。場合によっては、営業部に大きなプレッシャーがかかる結果ともなりますが、正しい経営判断ができない状況を続けていては元も子もありません。もしも信頼性のある見積もりが困難である場合は、工事完成基準を用いた売上計上が必要であると言えるでしょう。

***

工事進行基準は正しく運用することで企業に大きなメリットをもたらします。しかし、不正リスクが高く、その結果として企業に損害をもたらす可能性があることは忘れないようにしましょう。


 
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