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建設会計の勘定科目は特徴的!普通の勘定科目とはどう違う?
「未完工事支出金」という勘定科目をご存じでしょうか? これは建設業界でのみ用いられる勘定科目であり、一般的な商業・工業簿記には登場しません。ここでは、こうした建設会計特有の勘定科目や、それが用いられる理由などについてご紹介します。
建設業のDX化に関しての資料はこちら1.建設業会計の勘定科目は名前が独特
建設業は製造業の一種とされています。そのため、一見すると工業簿記を用いるように考えられますが、工事期間の長さや前受金等の授受といった特殊性から、建設業界計という会計処置が必要になります。
ただし、費用と仕掛品についての考えがまるきり異なるというわけではありません。工業簿記自体の知識はそのまま生かせます。ただし注意したいのが勘定科目です。たとえば売掛品は完成工事未収入金、仕掛品は未完工事支出金といった名称が用いられます。
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2.一般企業の勘定項目に照らし合わせるとどうなる?
それでは具体的に、商業・工業簿記と建築業会計とでは勘定科目にどのような違いがあるのでしょうか? 近しい項目を照らし合わせてみましょう。
資産
商業・工業簿記:売掛金→ 建設業会計:完成工事未収入金
商業・工業簿記:仕掛品→ 建設業会計:未完工事支出金
負債
商業・工業簿記:前受金→ 建設業会計:未成工事受入金
商業・工業簿記:買掛金→ 建設業会計:工事未払金
収益
商業・工業簿記:売上高→ 建設業会計:完成工事高
商業・工業簿記:売上総損益→ 建設業会計:完成工事総損益
費用
売上原価・工業簿記:売掛金→ 建設業会計:完成工事原価
このように、勘定科目の名称こそ違うものの、賃借対照表や損益計算書を作成する上で必要になる項目自体は、建設業会計でも一通り揃っています。上記のなかから、「未完工事支出金」について少し解説をしてみましょう。
たとえば、当期に材料の仕入れや賃金、外注費を支払った工事について、入金が来期になるケースについて。経費の計上をすべて当期に行ってしまうと、工事で得られる利益のバランスが期によって崩れてしまいます。そこで決算時点では、先行経費を「未完工事支出金」として資産へと計上するのです。
一般的な業種で考えると、在庫をイメージするとわかりやすいでしょう。仕入れは行ったものの、まだ売れていないという状況ですね。なお、未完工事支出期については、翌期に売上計上されたタイミングで経費へと振り替えられます。
3.なぜ建設業の勘定科目は違う名称なのか
では、なぜ建設業の勘定科目は一般的な商業簿記や工業簿記と異なる経理方法が採用されるのでしょうか? その理由のひとつに、「工事完成までに長い期間がかかる」という建設業界の特徴が挙げられます。
一般的な会計制度では、1年間という区切りで計算した業績を投資家等に対し提示することが求められています。しかし、前述のとおり建設業では1年で工事が終わらないことも多く、他の業種との間でタイムサイクルギャップが生まれることも。こうした問題を解消するために考えられたのが建築業会計であり、その区別として異なる勘定科目が使われていると考えられます。
なお、建設業については「建築業法」という法律のなかで勘定科目が決められています。そのため、一定の条件にかかわる会計については、これを守らなくてはなりません。
4.勘定科目の名称が違うことのメリット・デメリット
勘定科目の違う建設業会計を用いるメリットのひとつに、工事進行基準の採用があります。これは、売上高の計上を工事の完成・引き渡し時に行うのではなく、進捗に合わせて各期に計上するという方法です。
たとえば、数年にもわたる大規模な工事を請け負っていた場合、契約途中の期にはほぼ入金がない可能性も考えられます。すると、売上が立てられずに決算書には大幅な赤字が出ることも。これでは株主や金融機関などが、正しい評価判断を下せません。しかし、工事進行基準であれば進捗度に合わせて売上が計上できるため、正しい評価につながります。
ちなみに、一部の要件を満たした工事については、必ず工事進行基準の処理が求められます。そのため、積極的に対応するというよりは、適用せざるを得ないというのが実情とも言えるでしょう。また、建築業の場合には建設業許可更新や年度毎の変更届といった手続きが行われます。この際には、建設業会計でつくられた財務諸表が必要となるため、この点においても採用は不可欠です。
ただし、工事進行基準には不正リスクが高いというデメリットも存在します。とくに、契約時に発生する費用合計については操作がしやすいという特徴も。企業側には正しく見積もりを出し、それをチェックする体制づくりといった誠意ある対応が求められます。
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建築業界の会計は特殊ではあるものの、他の会計に比べて根本の考え方が異なるわけではありません。勘定科目について理解ができれば、仕訳等に困ることはないでしょう。ただし、なぜ特別な会計が必要になるかなどは、理解しておきたいポイントです。今回ご紹介した内容を踏まえて、適切な処理を心がけてください。
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