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法定福利費の仕訳はどうすれば良い?
社会保険料や労働保険料などは, 会社や個人事業主など雇用主側が負担することが義務付けられている経費であり「法定福利費」として計上します。しかし、なかには雇用されている従業員が負担する保険料もあります。これらはどのように仕訳計上すれば良いのでしょうか。
今回の記事では、法定福利費の仕分けについて具体例を交えて解説します。また、「福利厚生費」には、法定福利費の他に法定外福利費もあります。法定福利費と法定外福利費の違いなどについても詳しく解説します。
なお、「見積書における法定福利費」については、こちらの記事で詳しく解説していますのでぜひ参考にしてください。
建設業の見積書における「法定福利費」の扱い
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1.原則的な仕訳
法定福利費には、会社や個人事業主負担となる部分と従業員の本人負担となる部分があります。
給与支給時、月末、実際の支払時の仕訳方法を具体的に解説します。
給与支給時の仕訳
本人負担分は、毎月の給与を支給する際に天引きを行います。 法定福利費の種類には様々なものがありますが、ここでは最も身近でわかりやすい社会保険料を例に仕訳方法を見ていきましょう。
給与が40万円の従業員に対して社会保険料4万円を天引きして普通預金から支払う場合には、以下のように仕訳します。
(借方)給与 400,000/(貸方)普通預金 360,000
(貸方)預り金 40,000
社会保険料などの法定福利費は「預り金」として仕訳をします。
月末の仕訳
従業員から預り金として仕訳している社会保険料は、翌月以降の支払いとなります。
(借方)法定福利費 40,000/(貸方)未払金 40,000
月末に会社負担分を「未払金」として仕訳計上します。
※法定福利費には消費税がかかりません。
支払時の仕訳
法定福利費の支払いを実際に行ったときには、従業員からの預り金と、月末に計上した未払金を使って計上します。
(借方)預り金 40,000/(貸方)普通預金 80,000
(借方)未払金 40,000
2.簡便的な仕訳
原則的な仕訳を解説しましたが、これは日々の業務としては煩雑で、仕訳回数も増えます。そこで、簡便的な仕訳の行い方をご紹介しましょう。
仕訳のタイミングごとに具体的に解説します。
給与支給時の仕訳
(借方)給与 400,000/(貸方)普通預金 360,000
(貸方)法定福利費 40,000
原則的な仕訳では「預り金」として処理していた4万円を、簡便的な仕訳では「法定福利費」として仕訳します。そのため、法定福利費を一時的にマイナスとして計上することになるのです。
月末の仕訳
簡便的な仕訳では、月末仕訳は発生しません。
支払時の仕訳
実際に支払った時点で法定福利費を計上します。
(借方)法定福利費 80,000/(貸方)普通預金 80,000
給与支給時に一時的にマイナス計上しておいた法定福利費を支払時に仕訳計上することにより、会社や個人事業主負担分の法定福利費のみが計上され、原則的な仕訳と変わらない結果となります。
ただし、発生主義による法定福利費の計上がされていないため、決算の際に調整が必要となる場合があります。また、月末が休日などで保険料支払いが翌月に延びると法定福利費の計上が遅れることに注意してください。
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3.法定福利費と法定外福利費、福利厚生費との仕訳(会計処理)上の違い
「福利費」と一口に言っても、法定福利費と法定外福利費、福利厚生費はそれぞれ異なります。
法的義務の有無や会社側の負担割合など、条件や内容の違いがあるので注意しましょう。 また、一般的に法定福利費は非課税ですが、福利厚生費は項目によって課税・非課税が異なります。
福利厚生費は、法定福利費と法定外福利費の総称で、2つに大別されます。
法定福利費は、従業員の福利厚生のための費用のうち法律によって定められている費用であり、損益計算書上では製造原価や販売費及び一般管理費に分類されるものです。 どちらに計上するかは、支払われた給与のうち法定福利費の計算対象となった分がどの項目で計上されるかによって変わります。
たとえば「製造原価の賃金」として計上する従業員の法定福利費であれば「製造原価」となりますし「販売費の給与」として計上する従業員の法定福利費であれば、当然ながら法定福利費も「販売費」となります。
主な法定福利費は、以下のようなものです。
・健康保険
・厚生年金保険
・介護保険
・雇用保険
・労災保険
法定福利費は非課税であり、会社の負担分は損金として、従業員の負担分は所得税の計算の際に控除されます。
一方、法定外福利費には法律による規定はなく、各会社が独自に導入している福利厚生の費用です。目的により課税・非課税が異なり、法律による費用負担義務がない住宅手当や交通費なども法定外福利費として計上できます。
会社によって福利厚生制度は様々ですが、たとえば以下のようなもの法定外福利費として挙げられます。
・住宅手当
・交通費
・家族手当
・結婚・出産祝い金
・新年会
・忘年会
・運動会
・社員旅行
・残業時の食事代
・従業員で構成されるサッカー部、野球部等のサークル活動
また、従業員の海外旅行も、以下の要件を満たし、社会常識の範囲内と考えることができれば福利厚生費として認められます。
・旅行期間(現地滞在日数)が4泊5日以内であること
・全従業員の50%以上が参加していること
また、会社によっては以下のような福利厚生を導入していることもあります。
・家賃補助・住宅ローン補助
・スポーツ施設利用費補助
・健康診断費・人間ドックの補助
・マッサージルームで無料マッサージが受けられる
・有給休暇を15分単位で取得できる
・介護休業を無期限化する
必ずしも金銭が発生するとは限らず、従業員の健康や休暇、休業についてのサポート的役割を果たすものもあります。働きながら子育てをする場合など、急に子どもが熱を出して迎えに行かなければならない、トラブルが起きて学校に行かなければならない、などのケースもあるので、たとえばこういった場面で有給休暇を15分単位で取得できれば対応しやすくなるでしょう。
また、高齢化社会が進む中、介護の問題も深刻です。介護のために仕事を辞める選択をする人も少なくありません。人材が失われることは会社側にとってもマイナスです。こういった場面でも、介護休業を無期限化すれば良い人材が戻ってきてくれます。
法定福利費は決められているものですが、法定外福利費は会社独自で決めることができます。会社が従業員を選ぶ時代から、従業員が会社を選ぶ時代に変化してきているため、福利厚生を拡充することにより他の会社との差別化を図ることができるでしょう。 会社のイメージアップや採用率の向上につながることもあり、従業員からの会社の満足度も上がると予測できます。
ただし、福利厚生制度を作るにあたってはコストもかかりますし、管理する人材が必要になることもある点に注意が必要です。会社が福利厚生を充実させたと考えていても、実は従業員がほとんど使うことのない福利厚生だったというニーズのズレが起こることもあります。福利厚生をたくさん準備したから良いとするのではなく、ニーズに応えた形で必要とされる福利厚生内容を充実させていくことが大切です。
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4.福利費の違いを知って正しく仕訳しましょう
今回は、法定福利費の具体的な仕訳方法や法定外福利費との違いについて解説しました。 法定福利費は会社や個人事業主が負担する健康保険料などのことで、決められた金額を支出していれば税務上問題にはなりません。 ただし、法定で決められている以上の金額を負担していた場合、超える金額部分は給与支払扱いになり、源泉所得税等の課税対象になるので注意しましょう。
法定外福利費は、会社独自で行うことができる福利厚生にかかる費用のことです。働く従業員の満足度にもつながり、上手に活用することで節税対策にもなり得ます。しかし、あまり度が過ぎると福利厚生費として認められず給与として課税されてしまうことがあります。常識的範囲内で導入することが大切です。
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