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新収益認識基準の5つのステップと履行義務を知ろう!
2021年4月から上場企業に強制適用される「新収益認識基準」。建設業に当てはめた場合はどうなるの、といった声が聞かれるようになりました。収益を認識する上で必要となる5つのステップと、その前提となる「履行義務」という考え方についてご紹介します。
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1.新収益認識基準の履行義務とは?
「履行義務」とは、大まかに言うと、顧客との契約において財又はサービスを顧客に移転する約束することです。収益を認識する前提として「履行義務」の内容を明確にする必要があります。
例えば、マンションを設計施工する場合には「設計する」という約束と「施行する」という約束が存在します。この2つの約束が「履行義務」の内容です。また、設計業務が設計図を納めて完了する場合は、施工と設計は別々の履行義務となり、設計業務に監理を含むときは施工と一体の履行義務として扱うことになります。
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2.新収益認識基準の5つのステップ
収益を認識する時に必要となるのが、5つのステップです。ここでは、ステップごとの考え方や要件を確認しましょう。
ステップ1【契約の識別】
契約の識別とは、当事者間の契約として認められるものを収益としましょう、というものです。建設業では、書面で契約を承認し、顧客の信用調査等を行い、対価を回収できると判断したうえで受注することが多く、現状の実務でもステップ1の要件を満たしています。
ステップ2【履行義務の識別】
履行義務の識別とは、顧客との契約の中に何個の約束がありますか、あるとしたらそれをしっかり把握しましょう、というものです。
例えば、工務店が顧客宅の台所のリフォーム契約を締結し、特典として5年間の延長保証を付けました。契約はひとつですが、その中にシステムキッチンなどの仕入・販売、リフォーム工事の実施、5年間の延長保証、という3つの約束、つまり3つの履行義務が存在します。
ステップ3【取引価格の算定】
取引価格の算定とは、取引の金額はいくらになるかを確認しましょう、というものです。取引価格は、財またはサービスの顧客への移転や交換に伴い、企業が権利を得ると見込まれる対価の金額です。
ステップ4【履行義務への取引価格への配分】
履行義務への取引価格の配分とは、取引価格を一つひとつの履行義務に配分しましょう、というものです。
さきほどの工務店の例で、システムキッチンなどの定価が700万円、リフォーム作業の正規価格が200万円で、実際の契約金額は値引きをして800万円、加えて5年間の延長保証として、将来故障が発生した際に提供する代替品や修理作業などの「適正な見積価格」が100万円と見積もることができたとしましょう。その場合、取引価格を配分した結果は以下の通りです。単位はそれぞれ万とします。
- システムキッチンなどの仕入・販売の履行義務
800×700/(700+200+100)=560 - リフォーム工事の履行義務
800×200/(700+200+100)=160 - 延長保証の履行義務
800×100/(700+200+100)=80
「システムキッチンなどの仕入・販売」に560万円「リフォーム工事」に160万円「延長保証」に80万円がそれぞれ配分されることになります。
ステップ5【履行義務の充足による収益の認識】
履行義務の充足による収益の認識とは、いつ売上を計上するかを決めましょう、というものです。売上を計上するパターンは以下の2通りです。
・一時点で収益認識
・一定期間で徐々に収益認識
さきほどの工務店の例において、リフォームをした年の売上は800万円でなく、システムキッチンなどの仕入・販売分560万円+リフォーム工事分160万円、合計720万円です。
延長保証分の80万円は、将来5年間にわたってそれぞれ16万円ずつ売上として計上されることになります。
一定期間で徐々に収益を認識する、という表現は建設業会計で現在適用されている「工事進行基準」と類似しているように見えますが、下記の3つの要件のいずれかをクリアしないと進捗度に応じた収益認識は適用されず、一時点での収益認識となるので注意しましょう。
- 履行と同時に顧客が便益を受け、消費する場合
- 履行による資産の創出・増価につれて、顧客が資産を支配する場合
- 創出した資産が他に転用できず、かつ、履行済み部分に対する対価の支払を受ける権利がある場合
例えば、顧客所有の土地内での建設は要件2、顧客の注文に基づく住宅の建設は、要件3に該当するため、一定期間で徐々に収益を認識することになります。
3.まとめ
新収益認識基準では5つのステップと履行義務という考え方を踏まえて収益を認識することになります。2021年4月から上場会社への強制適用という形で始まるので、中小企業への影響は少ないと考えられますが、いつ適用されても慌てないようにしておきましょう。
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