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建設業界のSDGsへの取り組み~ポイントは先端技術?~
はじめに
最近、上着の襟元に、17色の円状のバッジを付けているビジネスパーソンをよく見かけるようになりました。これは「SDGs」のバッジであり、付けていることによって「私の働く会社は、SDGsに関連する事業をしている」と、さりげなくアピールしています。建設業界でも、日本建築学会が2020年4月に「SDGs対応推進特別調査委員会」を設置し、2022年までにSDGsに対する成果報告を行う予定です。ここでは、ほとんどの子供たちが学校で学び、広く浸透してきているSDGsの目的や、建設業界の先端技術を駆使した取り組み、企業が熱心に取り組む理由などを詳しく解説します。
1.SDGsの17の目標とは
SDGsとは、2015年9月の国連サミットにおいて、全会一致で採択された国際的な目標であり「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略称です。エス・ディー・ジーズと発音し、17の開発目標と169のターゲット、232の指標が定められています。国連加盟193か国が2016~2030年の15年間で達成するために掲げたもので、国だけでなく、地方公共団体、企業や学校などが取り組んでいます。
SDGsの17の開発目標は以下の通りです。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
2.SDGsへの取り組みが経営方針の見直しに
建設業界は、地域の人が安心して暮らせる社会をつくるために住環境の整備やまちづくり、インフラ構築、省エネ、環境保護などに取り組んでいるので、事業の理念そのものがSDGsに合致していると言えるでしょう。国際的な目標であるSDGsへの取り組みは、経営方針や日常業務を見直すきっかけとなり、継続的な事業戦略、企業イメージの向上、新規事業の創出などにつながります。
「SDGsの何番目の目標を実現するための事業である」と説明することにより説得力が増し、企業イメージが向上するというメリットもあるため、最近では多くの企業がSDGsに取り組んでいます。
SDGsの17の目標のうち、建設業が関係する主な目標は以下の通りです。
6,安全な水とトイレを世界中に
7,エネルギーをみんなに そしてクリーンに
9,産業と技術革新の基盤をつくろう
11,住み続けられるまちづくりを
13,気候変動に具体的な対策を
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3.建設業界が取り組むべきSDGsの目標
17の目標の中で、特に建設業界が貢献できるものは、次の5つです。
「6,安全な水とトイレを世界中に」
これは、すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保するというものです。
屋内外にトイレを建設するような直接的に貢献できるもの以外に、たとえば、建設現場で汚水をそのまま流さずに済むような機材を導入したり、男女でトイレを分けた上で清掃に気を配り清潔に保ったり、社会貢献活動の一環として上下水道が整備されていない発展途上国への支援を行うなどの取り組みが考えられます。
「7,エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
これは、すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保するというものです。
建設業界が貢献できるものとしては、顧客の建築物に太陽光発電パネルや省エネ機器などの設置を提案したり自社の社屋などに積極的に設置したりといった取り組みが考えられます。また、省エネ設計の研究開発に取り組むなども該当します。
「9,産業と技術革新の基盤をつくろう」
これは、強靱なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進およびイノベーションの推進を図るというものです。
土木建築分野を担う企業だったら、土砂崩れ等防止工事や災害に強いインフラのための工事など、直接的に貢献できます。
そうでない場合も、耐震技術を向上したり、資材やエネルギーなどの資源を無駄なく使うための取り組みなどが考えられます。
「11,住み続けられるまちづくりを」
これは、包摂的で安全かつ強靱で持続可能な都市および人間居住を実現するというものです。ここに挙げた5つの目標の中では最も建設業界と親和性が高いものといえるでしょう。
具体的には、災害に強い建物の建築やまちづくり、省エネルギー住宅の建設、建築の際に排出される廃棄物を正しく処理したり排出量を減らしたりする取り組みなどが考えられます。
「13,気候変動に具体的な対策を」
これは、気候変動およびその影響を軽減するための緊急対策を講じるというものです。
建設業界として具体的に取り組めるのは、災害対策のための土木工事やZEH住宅の推進、そのための技術向上などでしょう。
4.建設業界がSDGsに取り組むメリット
SDGsでは民間企業による取り組みを求めているため、各企業がSDGsに取り組むことは義務でもありますが、コストをかけて取り組むだけのメリットもあります。 主に、次の3点です。
①企業イメージ向上、優秀人材・若者の採用
SDGsに取り組み、その内容をWebサイトなどで社外に発信することで、企業イメージの向上につながります。ステークスホルダーはもちろん、一般消費者や学生などへアピールできれば、ブランディングにもつながります。特に若い世代はSDGsや社会貢献への関心が高いため、新卒採用で学生からの印象がアップし、優秀な人材の採用につなげることができます。
②コスト削減
SDGsに取り組むためには、初期投資も必要ですが、省エネが推進されるため、長い目で見ると、コスト削減が期待できます。
また、SDGsへの取り組みで投資家から支持を得れば、資金の調達もしやすくなるでしょう。
③新しいビジネスのチャンス
「建設業界が取り組むべきSDGsの目標」で、建設業界として取り組みやすい目標と具体的な取り組み例をご紹介しましたが、これ以外にも各社の強みを活かし、ビジョンに沿ったさまざまな取り組みが考えられます。アイデア次第で新規ビジネスを創出することができます。SDGsを一つのきっかけとして、新たなビジネスを創出することで、リスクヘッジや競争力強化に役立ちます。
5.先端技術を用いて、建設業界が取り組むSDGs事例
SDGsは政府や関連機関だけでなく、多くの企業が参加しています。大手建設会社の中には、企業独自の先端技術を用いて、SDGsの17の目標達成を実現を目指して活動している企業も数多く存在します。ここでは、大手建設会社の事例を紹介していきましょう。
大和ハウス工業株式会社
千葉県流山市で、親子で通勤ができ、緊急時でも保護者がすぐに対応できる「職育近接」の労働環境を備えるマルチテナント型大規模物流施設群「DPL流山」を整備しました。保育施設を完備するとともに、免震システムや非常用自家発電機を設置するなど、BCPにも対応した防災配慮設計を施した国内最大級の物流施設です。物流の効率化・自動化を実現するため、AIやロボットなどの最新技術を取り込んだ次世代型多機能物流施設となっています。
大成建設株式会社
福岡市博多区で竣工した「JS博多渡辺ビル」が、1次エネルギー消費の削減量が50%以上となる建物であることを認証した「ZEB Ready」をテナントオフィスビルでは国内初めて取得しました。国土交通省などが「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」を推進しており、エネルギー消費の削減量が50%以上で「ZEB Ready」、75%以上で「Nearly ZEB」、 100%の「ZEB」となっています。「JS博多渡辺ビル」は明るさによる自動調光システムや断熱機能の壁を採用しており、52%エネルギー量を削減して最高ランクの認証を取得しました。
株式会社竹中工務店
シンガポールに建設した高層オフィスビルが2015年、同国のBIMアワードで最優秀賞を受賞しました。BIM(Building Information Modeling)による設計に関しては、世界最高水準を誇っており、施工段階の情報一元化、設計施工一環プロセスにおけるフロントローディングの推進を牽引しています。最近では、ロボットが自律走行するための経路や範囲を指定したり、遠隔操作や監視を行ったりするため、クラウド上で稼働する基盤システム「建設ロボットプラットフォーム」を開発したのです。省人化工法、IoT、ロボット技術の展開などにより、抜本的な生産性向上に取り組んでいます。
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6.まとめ
SDGsの17の目標を掲げて新規事業の発表を行う会社が増えています。建設業界は、SDGsの目標を複数、同時に実現できる業界です。企業としてSDGsに取り組むことは、事業承継がスムーズになるとともに、企業イメージを向上させ、新規事業の創出することができます。SDGsを意識した経営戦略を立てて、事業の活性化に役立ててみてはいかがでしょうか。
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