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社労士が解説!残業代請求を受けるおそれあり。建設業でよくある「社用車での乗り合い」について
会社に集合してから工具等を積み込み、社用車にて乗り合いで現場に向かうという方法を取っているところは多いのではないでしょうか。
今回は多くの会社で行われている「社用車での乗り合い」について解説いたします。
「移動時間」が労働時間に当たるか、通勤時間に当たるか
会社から乗り合いで現場へ向かう「移動時間」を労働時間とするか通勤時間とするかは、事業主の指揮命令下にいるかどうかが判断の基準となります。
東京地裁平成20年2月22日判決では、下記の状況から「移動時間」は労働時間であると判断されました。
・原則として会社へ集合してから当日の天候などを勘案して会社代表が指示を行う
・現場へ移動する前に機材等の積み込みを行う
・車内でも打ち合わせをしながら移動を行う
一方で、通勤時間であると判断された事例もあります。
東京地裁平成14年11月15日判決では、
・会社から現場への移動について会社から指示はなく、直行直帰が認められていた
・当日の作業内容は前日までに決まっていることが多く、改めて指示はされなかった
・移動に利用する車両の運転手や集合時刻は労働者間で任意で決められていた
という状況から、移動時間は労働時間ではなく通勤時間であると判断されました。
労働時間に該当するかの判断基準
社用車での乗り合いが労働時間に当たるかどうかの判断基準を下記の表にまとめました。
たとえ直接的な指示を行っていなくても、暗黙の了解で乗り合いが行われているという場合や、乗り合いを行わなければ従業員側に不利益が発生しうる状況であれば①に該当する可能性があるため注意が必要です。
裁判になった際にどう判断されるかは個別の事情にもよりますが、乗り合いでの移動時間を労働時間ではないと判断されるためには、
・現場までの経路を限定せず、直行直帰を認める
・当日の作業内容の決定や準備作業を前日までに完了させる
などの対応が必要でしょう。
上記対応を行う場合、勤怠管理システムを導入することで会社に来てタイムカードを押すこともなく出退勤管理が可能になります。直行直帰にも対応している勤怠システムもありますので、まだ勤怠システムを導入されていない場合は検討されてはいかがでしょうか。