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「i-Construction大賞」にみる建設業界でICTを活用して業務効率化を成功させるヒント
「i-Construction」(アイ・コンストラクション)とは、国土交通省が建設現場を魅力ある現場に変えていこうと推進する活動のことです。毎年、国土交通省が発注している事業の中からベストプラクティスを選んで表彰しています。今回は、令和元年度の大賞「国土交通大臣賞」を受賞した4つの団体の取り組みをご紹介するとともに、建設業界の業務効率化成功のヒントを探ります。
1.建設業の勤怠管理にアプリを活用するメリット
国土交通省が2016年度から本格的に導入し、建設現場の生産性向上を図る「i-Construction」。ICT技術を建設現場に広げる取り組みは数多くありますが、その中でも以下の3つを目標に掲げ、ICT活用を推し進めています。
- ICTの全面的な活用(土木)
- 規格の標準化(コンクリート工)
- 施工時期の標準化
また、対象を国土交通省の発注事業だけでなく、地方公共団体が発注した取り組みにも拡大しました。
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2.株式会社豊蔵組の取り組みと成功のヒント
石川県金沢市の株式会社豊蔵組は、能越自動車道・輪島道路のうち、輪島市三井町長沢地区の延長約420mで、法面整形と水路掘削工事を施工しました。マシンコントロールバックホウ(MCバックホウ)にツインヘッダを装着したことで施工性と品質の向上に成功したことから、大賞を受賞したのです。
ツインヘッダの先端が円筒形であり、オペレータが掘削地盤面とツインヘッダの先端とが接している距離をとらえにくかったため、仕上げを伴う掘削作業での実績は少なかったのですが、マシンコントロールにより制御されたツインヘッダを使うことにより掘削位置の把握が容易になり、経験の浅いオペレータでも施工できるようになりました。とりわけ、小段排水や縦排水の掘削に利用すると、施工性が通常の3倍以上になったほどです。また、小さいツインヘッダを用いることで掘削時の衝撃がやわらぎ、小段の法肩が崩落する可能性が低くなることも判明しました。
締固め管理システムを搭載した大型振動ローラおよびブルドーザに対して、天候状況や土質ごとに使用する機械を変えながら実験を行ったところ、より走行不能による作業の中断・中止がなく、ICT建設機械を効率よく稼働させることができたのです。従来から使われているツインヘッダにICT技術を搭載することにより、能力や実績が乏しいオペレータでも想像以上の成果を上げることができ、施工性が向上することを実証しました。
3.ふじの国 i-Construction推進支援協議会の取り組みと成功のヒント
ふじの国 i-Construction推進支援協議会は、静岡県内の建設業関係者や、ICT専門家などが設立した官民共同の団体です。静岡県の建設イノベーションを図るため、現場の声を抽出しながらICTの普及促進に尽力し、全国で初めて3次元データ保管システムを構築したことが評価されました。
全国発の3次元データ管理システム「点群データオープンサイト」には、UAVやTLSによる測量データ、ICT建機の施工データ、3次元設計データなどが収集されており、建設業者が必要なときにデータを見ることができるようになっています。
また、建機データを活用した現場管理手法を国内の公共土木工事で初めて導入することにより、現場での計測や検査業務の削減に成功しました。さらに、静岡県内の中小企業がICTを円滑に活用できるように地方公共団体で初めてガイドラインを作成する一方で、ICT先進企業がまだ導入していない企業を支援するため、静岡県オリジナルの共助制度「ICTマイレージプログラム」をスタートさせ、ICT活用を推進しています。
4.株式会社昭和土木設計の取り組みと成功のヒント
愛知県一宮市にある株式会社昭和土木設計は、2015年からICT推進室を設置し、全ての工程で必要なICT活用を考え、BIM/CIMの最適化を図る取り組みが評価され、大賞に輝きました。
低コストのデジタルカメラによる写真測量の精度を向上させ、計測対象の特徴や解析手法を効率化・最適化を目指した結果、EE東北2019 UAV競技会の総合技術部門で優勝し、ベスト計測賞を受賞したのです。また、BIM/CIMにおいて、特別な3次元設計データを作るのではなく、今までの設計手法や資料 を有効活用する「ちょうどいいBIM/CIM」を掲げ、将来的にもデータを活用できるようにするため、測量・施工技術者と協働して、3次元設計データ作成の研修に取り組んでいます。
2015年から2017年にかけて、ハンズオン講習を計8回実施。延べ2,000人の参加者に対して、BIM/CIMに初めて取り組む際につまずきやすい点を紹介。「どのソフトで」「どのように」苦労したか、といったことについて実例を交えて伝えています。
5.株式会社ランドロクの取り組みと成功のヒント
東京都港区に本社を構える株式会社ランドロクは、ランドログパートナー制度を通じたベンチャー企業同士の連携で大賞を受賞しました。データ共有や画面・デバイス活用など、様々なソリューションを組み合わせて建設作業現場の見える化を実現しています。建設機械やダンプ・トラックのシガーソケットに差し込み、エンジン稼働時間や位置情報を自動的にアップロードすることにより、現場ごとに建機やダンプの稼働状況を把握するシステムを開発しました。また、3次元データを一括管理し、関係者間で情報共有を可能にするとともに、取得データに基づいた工程の見直しができるようにしたほか、作業員のヘルメットに装着したバイタルセンサーで、体温や転倒の有無を把握し、P2P(ピア・ツー・ピア)ネットワーク経由で関係者に状況を報告する仕組みを作り、現場の安全性向上に寄与しています。
6.まとめ
国土交通省は建設業界を3K(きつい、汚い、危険)職場から新3K(給料が高い、休暇が取れる、希望がある)職場へ変えようとしており「i-Construction大賞」も建設業界活性化の手段の一つです。大賞を受賞した建設会社や団体の事例を参考に、ICTを活用した業務効率化や生産性向上のヒントにしてみてはいかがでしょうか。
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